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グラウンドが荒れる。
新雪は蹂躙され、白いキャンバスに点々と絵の具を落としたが如く足跡が刻まれる。
むき出しになる地面。
ところどころに穴が空き、もはや運動などできる状態ではない。
戦闘の激しさを物語っていた。
「いきなさい!」
千歳が手を振り下ろす。
彼女の手に導かれるように、空中を舞う無数の雪の結晶が飛ぶ。
雪の水分子を操り人工的に吹雪を作り出したのだ。
氷の牙がサラマンダーに向かう。
が、それがサラマンダーに突き刺さることはなかった。
彼の体に触れる手前、全て溶かされてしまうのだ。
猛る吹雪のなかにありながらも、サラマンダーの黒い影ははっきりと認識できた。
「はっ!」
吹雪が晴れるのと同時に明子が地面に手をつける。
一瞬間を置き、そこからつららのような鋭利な突起が伸びてきた。それは一直線に地面を走り、サラマンダーのもとに殺到する。
『ふん』
しかしサラマンダーは正拳突きでこれを迎撃。もうもうたる土煙とともに爆砕した。
「化け物が!」
毒づく明子の隣から二つの影が飛ぶ。
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