回顧

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「こうしちゃいられないわ」 ミニラーメン製作を諦め、丼を持ってラーメンを食べていた操は、コトリと丼を置いた。 「優一がそんなんだとは思わなかった。これは放課後に勉強するしかないわね」 「ごちそーさまでした」 優一もちょうど食べ終わり、スプーンを皿の上に置いた。 「必要ない。俺だって勉強してないわけじゃない」 優一はコップの水を一口飲んだ。 「それに人の心配してる暇があったら、まずは自分の……って、その必要はないか」 「ま、いいじゃねぇか」 稔がご飯をかき込む。 「テスト前日にみんなで勉強ってのもいいだろ。学年順位ワンツーコンビが教えてやりゃ、お前の成績もぐーんとアップだ」 「お前に教えを請うたところで、俺の足しにはならん」 優一は冷ややかな視線を稔に送った。 以前優一は、授業で分からなかったところを稔に尋ねたことがある。その時の返事は、『教科書に載ってるだろ』というものだった。 それ以来、彼は稔に質問をしたことがない。 頭の良さと教えることの上手さはイコールではないと、優一は悟ったのである。 「賛成多数で決まりね」 そんな優一の悟りはつゆ知らず、操はてきぱきと話を進める。 「場所はどこにしましょうか?」 「優一の家でいいんじゃね?このメンバーの中じゃ一番近いと思うし」 「おいおい。何で俺ん家になる――」 「OK。じゃあ授業が終わったら向かいましょ」 「りょーかい。いやぁ、楽しみだなぁ!」 「……好きにしろよ。もう」 自分の意志とはまったく関係なく進む勉強話に、優一はとうとう白旗を上げた。
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