回顧

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そして放課後―― 「優一の家はどこなの?」 「歩いて十五分ってところじゃないか?……つーか本当に来るのかよ」 「当たり前だろ。男に二言はなしだぜ?」 手早く帰り支度を済ませた三人は、優一宅を目指して歩いていた。 「はぁー……。まったく、しょうがないなぁ」 なお、優一だけは乗り気ではない。 「ま、そう言うなって。みんなでやった方が絶対はかどるんだから」 稔は馴々しく優一に肩を掛けた。 「あーもう。いちいち触るなっての!」 優一は荒っぽく稔を振りほどいた。 「んもう。いけずぅ」 くねくねと体をくねらせる稔。 「気持ち悪いわっ!!」 「ふふっ」 そんな二人のやりとりを、操は穏やかな笑みで見ていた。 ゴールデンウィークはとうに過ぎ、もう少しで梅雨に入ろうかという季節。 夏に向けての準備期間とも言うべきか、強い日差しが照りつける。 花も木も人も、何だか活気づいているように思えた。 「ここ、どっちに曲がるの?」 学校からの一本道を下っていくと大通りにぶつかる。 右は中心市街地、左は住宅街へと続いている。 「左だな」 優一は指で差す。 「で、少し歩けば着く」 「何の変哲もない普通の家いでっ!!」 言い掛けた稔の頭を、優一は鞄で叩いた。 テスト勉強のために教科書やノートなどがたっぷりと詰まっている。 「ぼ、暴力反対!」 涙目で訴える稔。 「お前は礼儀ってものを学べ」 優一は鞄を肩にかけなおしながら言った。
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