回顧

7/36
前へ
/396ページ
次へ
「ちょっとあなた達」 二人のやりとりは見ていて楽しいが、そう何回もやられていては先に進まない。 見兼ねたように操が口を開いた。 「いつまでそんなことしてるのよ。私、怒ったら何するか分からないわよ?」 『え゛っ!?』 「な、なによ?」 本人は冗談のつもりで言ったらしいが、男二人はそう取らなかったらしい。 二人揃って近づいてきた。 「悪かった。頼むから竜巻を起こすのはやめてくれ」 「すまん!本当にごめん!勘弁してくれ」 優一は真剣な眼差しで操の肩を掴み、稔は土下座せんばかりの勢いで頭を下げている。 まるで怪物を宥めているかのようだ。 「あんたらねぇ……」 操の周りを風が取り巻きはじめた。 「あー……。こりゃまずいかね?」 優一はぱっと手を離し、操から数歩離れる。 「優一!桐生さんを抑えろ!」 優一の後ろに隠れた稔が、優一の肩から顔を出しながら言った。 「無理。悪いが大人しくボコられてくれ」 優一は無情にもそう断定した。 もっとも、優一は魔法を吸収出来るので、ボコられるのは稔だけなのだが。 「ふざけんじゃな――」 「おいおい。楽しそうだなぁ」 不意に後ろから声を掛けられた。 「なによ!?」 操が振り向く。 「なんだなんだ?」 優一と稔もそちらを見る。 そこには三人の男が立っていた。 真ん中は金髪を逆立て、右側はパンチパーマ、左のは坊主である。ダボダボのズボンに着くずした学ラン。 一昔前の不良を思わせるような、そんな風貌だった。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90799人が本棚に入れています
本棚に追加