回顧

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(綺麗だなぁ……) とても高校生の息子を持っているとは思えないその風貌に、操はすっかり魅了されていた。 「ただいま。母さん」 「あら?今日はお客さんが一杯なのね」 綾香は優一の後ろに居る二人に目をやった。 「こんにちは。稔君」 「ども。お邪魔します!」 稔は若干テンションが上がっている。 下心は無いだろうが、鼻の下が伸びているのは気のせいだろう。 「そちらは誰かしら?」 綾香は続いて操を見る。 「あ、えと……」 すっかり見とれていた操は慌てて頭を下げた。 「は、初めまして!私、塚越君のクラスメートの桐生操と申します」 「桐生さん?……あぁ、校長先生のお孫さんね」 綾香はゆっくりと丁寧に頭を下げた。 「どうも。いつも息子がお世話になってます」 「い、いえ。むしろ私の方がお世話になってるくらいで……」 何やらよそよそしい操の姿を見て、綾香はクスクスと笑った。 「ふふっ。優一も隅に置けないわねぇ」 「何をわけの分からないことを。今日はみんなでテスト勉強するから、ちょっと居間借りるよ」 優一はさっさと靴を脱いでしまった。 「どうぞ。みんなもゆっくりしてってね」 綾香はにっこりと笑い、纏めた髪を揺らしながら歩いていった。 「綺麗だなぁ……」 その後ろ姿を、操はぽけーっと見ていた。 「だろ?あのお母さんからどうしてこんなひねくれ息子がぶっ!!」 稔の顔に鞄が飛んできた。 「聞こえてるぞ」 投げたのは他でもない。 優一は容赦のない男である。
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