回顧

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「え……?」 「いじめ……?」 二人は耳を疑った。 まさか、あの優一が。 そんな筈がないと。 「普通の人間は幼稚園くらいで魔法の発現が見られる。でも、優一は魔法を使えなかった。 もちろん人によって早い遅いがあるから、魔法の基本的な使い方を学んで小学校に上がったんだ。 しかし、それでも使えなかった。 それがいじめられた原因だよ」 二人の思惑とは裏腹に、どうやら宏の言っていることは本当らしい。 「幼子というのは時として残酷で、自分と違う者を徹底的に痛め付けてしまう。手加減の仕方を知らないから。 暴力、暴言、魔法による攻撃。まだ自分の力を知らなかった優一には、まさに地獄だっただろう。 妻が魔法医療を心得ていたんだけど、なぜか優一には効かなかった。それが、彼の能力に気付いたきっかけだよ」 魔法医療というのは、体内にあるエーテルを活性化させて、傷などを治療する技術である。 人の体を支えているエネルギーに直接作用するので、その効果は絶大なものだ。 反面、他人のエーテルを扱うのは難しく、一度調律を乱してしまうと、肉体、もしくは精神に重大なダメージを与えてしまう。 体を支えるエネルギーを使うということは、それほど危険なことなのだ。 そのため担い手は少なく、医療現場での主流になることもあまりない。 「それで、僕の大学の病院で検査をしてもらったんだ。結果はお察しの通りだよ」 宏は紫煙を吐き出すようにため息をついた。
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