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(まったく……)
操はイライラとしていた。
今隣を歩いている男の甲斐性の無さに。
一応自分は女である。
夜道を一人で歩くのは、いくら治安が良い町と言っても好ましいことではない。
もちろん変態の一人や二人退けるくらいの力は持っている。優一もそれを分かっているのかも知れない。
しかし、それとこれとは話が別だ。
分かっていても「送っていこうか?」と声を掛けるのが男と言うもの。自分がもし男だったとしたら、必ずそうする……と思う。
それなのにこの男ときたら母親に促されるまで動こうともしなかった。
男として、本当にそれでいいのだろうか。
(情けない……情けない……)
「だいたいさぁ。もし万が一変質者に襲われたとしても、百人や二百人なら小指で事足りるだろ?」
やはり何も分かっていない。
優一の発言は、今の操にスイッチを入れるには十分だった。
「うるさいわね!いじめられっ子のくせにっ!」
まるで繋がりが感じられない。
怒りに任せた発言だった。
「いじめられっ子……?」
優一がぴたりと歩みを止めた。
(あっ……)
言ってはいけないことを言ってしまった。
気付いても、時既に遅し。
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