回顧

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「神武大学ぅ!?」 稔は戦慄した。 神武大学には、名門とうたわれる明神学園からでも入学するのは難しい。毎年数人居ればいい方とも言われている。彼や操レベルでも厳しいかも知れない。 しかしそんな彼らの遥か後方に位置する優一は、その大学に入ると公言したのだ。 しかも、コネを使って。 「卑怯だぞっ!!」 「俺は使えるものを最大限に利用するだけだ。卑怯も何もない」 稔の抗議にも優一は動じない。 ムキになっている稔を、路傍の石ころに向けるような目で見ていた。 「それで大学に入ってどうするのよ?やりたいことも無くて入ったら、ただのお金の無駄じゃない」 またしても呆れ顔の操。 大学とは関心のあることを徹底的に追求する場所。ネームバリューも大事だが、それだけで大学を選ぶのは愚の骨頂。それが彼女の持論だ。 「失礼な。俺にだってやりたいことぐらいあるさ」 些か不満そうな顔をして、優一は自分の胸に手をあてた。 「俺は神武大学で、『無』の研究をしたいと思っている」 その口調は、今までのへらへらしたものとは、明らかに違っていた。
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