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トラが私の膝の上から離れ、隼人の方へ擦り寄っていく。
「あなたには関係ないわ」
初めて彼と会話した気がする。
「確かに俺には関係ないことだな。 洋子…さんだっけ、余計なことを言ったね」
トラの頭を撫でながら、彼はつぶやいた。長く、男の割に綺麗な指が、優しく動く。
「どうして、私の名前… 」
「店で、ずっと俺のこと見てただろ? 」
否定の声を塞ぐように唇が塞がれた。
幾度となく心に発せられた警告も、散り散りになり、胸の中は悔しいほどに広がる充足感に溢れていた。
「ほんとの名前はつや子って言うの…」
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