12人が本棚に入れています
本棚に追加
「会社が倒産した。もうお前の面倒は見てやれない。すまない、別れてくれ」
「はい…今までありがとうございました」
いつかそんな日がやって来る、そのいつかが今なだけ。それが別れを切り出された時の感想だった。泣いて縋った方がいいのか、あっさり別れに応じた方がいいのか、まるで第三者のように考えている自分がおかしくも思えた。
私は一人でいる時に、すぐに答えの出る自問自答を繰り返した。
―この人を愛しているのか?
そしてすぐさま、答えのでない自問自答を始める。
―私は人を愛することができるのか?
そんな時、決まって部屋をとおり抜ける風は生ぬるく、不快に私をなぶり続けていた。
最初のコメントを投稿しよう!