闇夜のともしび

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赤い血の海が広がる。トラが恐怖に震えながら、ミィミィ鳴く。 けたたましく鳴り響くサイレンの音が、現実感をなくした私の五感に忍びこんで来る。 「正… 」 一言も物を言わぬ正が、ストレッチャーに乗せられ、救急車に吸い込まれていく。 「正、正、正、正、正…」 ただ祈るしかできない。もし本当に神がいるのなら、私の命と引き替えにしてもいい、正を助けて。この世で1番大切なものを私から奪わないで。 闇ばかり濃い夜に、差し込んだ一筋の光が、無惨にも消えかかっていた。
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