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薄い胸、泣きぼくろ、痩せた肩。姿見に映る自分の姿に、どこか不幸癖が染みついているような気がする。
色気を売らないスナックで働き始めて一月が過ぎようとしていた。
「洋子ちゃんも綺麗なんだから、もうちょっと愛想よくしたら?」
洋子という名前で出ている私に、ママが呆れながら言う。
「すみません…」
「ほぉら、それよそれ! スマイルよ、スマイル…」
自分で言って自分で吹き出すママにつられて私も笑う。この陽気なママに何度救われたことか。母を早くに亡くした私にとって、母がわりと言っても過言でないくらいに、大事に思っている。しかし、そんなことを言ったら申し訳ない気がして、甘えることもできない。 「洋子ちゃん、ご飯食べにいらっしゃい」
本当はうれしいママの優しさにも、素直になることができないでいた。
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