恋の掛け替え

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「じめじめすると思ったら、昨日梅雨入りだって! 景気づけにカラオケでも歌っちゃおかしら」 その日の店は、外の天気が影響してか、常連さん2人しかおらず閑散としていた。 「いらっしゃいませぇ」 ママの弾むようで、どこか警戒している声が響く。 「あら、はじめましてのお客様だわ。 どうぞどうぞ。 おビールでいいかしら?」 30前後の長身の、掘りの深い男だった。ノーネクタイのジャケットで、時計も靴も高級なものを身につけている。 面差しは精悍だが、どことなく影があり、いわゆる堅気の男とは言い難い雰囲気をかもしだしていた。
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