2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
その日 俺は、少し苛々しながら仕事をしていた。 せっかくのイブだってのに 昨日のちょっとしたミスのせいで、俺だけ休日出勤になったのだ。 ――ちきしょう…なんでいつも俺だけなんだよ!? 本当は、恋人の詩織とデートの約束をしていたのに…。 何ヶ月も前から予約していたレストランも昨日キャンセルした。 当然 詩織の機嫌も悪く、苛ついていた俺は昨夜遅くに来た里奈からのメールの事など すっかり忘れていた。 ――なんだっけな?なんだか訳わからんメールだったけど… 里奈は、詩織の姉で俺は少し前まで付き合っていた。 里奈に別れを切り出した時、俺は恐る恐る詩織の事が好きになったと言ったのだが、予想に反して里奈は 『やっぱりぃ?あたしもそんな気ぃしたんだ。詩織ちゃんには叶わないから…いいよ、わかった。あたしも隆とはそろそろかなって思ってたんだぁ』 と 屈託の無い笑顔で 俺にこう言った。 だから俺は、まるで気にしてなかった。 その何日か前に、里奈から もしかしたら妊娠したかも と言われてた事さえ すっかり忘れていた。 先週 里奈からメールが来るまで里奈の存在すら すっかり忘れていたのだ。 詩織とは姉妹だが、別々のマンションに住み、たいして仲も良くないらしく、詩織の口から里奈の話しを聞く事もなかったし。 先週の里奈のメールは…クリスマスイブに 俺に前に買っておいたクリスマスプレゼントを渡したい… そう書いてあった。 正直 俺は ウザかった。 今さら 別れた女からクリスマスプレゼントなんて貰いたくなかったし それに…里奈は気付いてなかったが、俺は詩織と里奈の両方と三ヶ月程 付き合っていたのだ。 その間 里奈には かなり冷たい態度をとっていたから、なんとなく里奈に会うのが 後ろめたかった。 が、そんな里奈が なんだか可哀相になり 『じゃあ 行くよ 里奈のマンションに昼ごろで いぃかな オレ 夜 出かけるからさ』 と、こんなメールを送ってしまった。 そしてやっぱり後悔したから、昨夜の里奈のメールも どうせ確認のメールだろうとロクに読まずに消してしまった。 でも もうすぐ昼になる…里奈は 待っているだろうか。 絶対 待っている、里奈は、そういう女だ、いつも飼い犬のように俺の言う事に従っていた女だから。 俺は 『今日は やっぱり行かない』 それだけ書いてメールを送った。 本当は 仕事だからって書いたのに なんだか苛々して消してしまったんだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!