絶対

2/5
前へ
/118ページ
次へ
俺は今日も、あの方に命令された通り、人を殺した。 いつものように、あの方の住む屋敷へと戻る。 屋敷の長い階段を歩き、自分の部屋の前にさしかかった時。 「おう、帰って来たんか、キラ。」 気配も感じさせず、俺の後ろに立っていた白猫。 正確に言うと、白い猫耳と、尻尾を生やした、人型の生き物…、獣。 「堕天使猫…。」 「ん、どないしたん? 今日は一段と声が暗いナァ。」 「…何でもない。」 俺は堕天使猫に背を向け、扉を開けようとした。 「ちょい待ちィ。 …手、怪我したんやろ? 手当てしたるから、こっち来ィ。」 堕天使猫はそう言って、俺の腕を引っ張りながら歩く。 「ちょ…! 俺は平気だ…!」 「だァーめ。 あの方が心配するやろ? 大人しくしとき、キラ。」 …あの方。 俺の絶対的な存在。 あの方の事を言われると、俺は何も言い返せなくなる。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加