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「…触るな…ッ!」
瞬間、乾いた音が響く。目を見開いた亘が赤くなった手を握っている。
「あ、…ごめん…迷惑、だった…ね」
亘が俯く。お節介妬いちゃってごめんと呟く。(違う違う、そうじゃなくて)
「いや…俺も悪かった。でも本当に大丈夫だから」
上手く伝えられないもどかしさの上から、亘を傷つけてしまった罪悪感がのしかかる。もともとは自分が作ってしまった重い空気に耐えられず、俺も亘も勝手に歩く速度が早くなっていった。
「…あ、じゃあ僕、ここで帰るね」
気がつくと、三橋神社が目前に迫っていた。亘の無理矢理作った笑いが俺の鼓動を勝手に早める。
そして、手だけ振って走って帰ってしまおうと考えていた俺の頭を真っ白にした。
「…待て、よ」
自分で拒んでおいて自分から歩み寄るなんて傲慢だ、なんて思いつつ俺は後ろから亘の肩を掴む。
「なに…?」
「ごめん、さっきは」
「やっぱり、僕が嫌いだった…?」
「違う、ただ…」
その続きの言葉を聞く為なのか、振り返った亘の身体をゆっくり抱き締める。
「え、ちょっ、何す」
「…お前が好きだから…何か、お前といるとおかしくなりそうなんだよ…」
肩ごしに亘が息を飲む音が聞こえる。そして、うん、と頷くのが分かった。
「…やっと気付いたか、馬鹿、鈍感、お人好し…」
お人好しは関係ない、と不平を並べる亘の身体をさらにきつく抱き締めてやれば、その身体が少しだけ熱くなるのが分かった。
息も出来ないくらいに君を想う
だから君も、俺を想っていて下さい
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