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今、俺は絶対的な危機を迎えていたりする。
椅子に座らされているのだが、両手は後ろに縛られ、口には猿轡があるから魔術も使えない。目隠しされていないから周囲の状況は理解出来るのだが、逆にそれが恐怖を誘った。
そもそも救援は期待出来ない。視界の端にはフツノとクロムがいるが、二人とも動きを封じられているようだ。
あの二人の動きを封じる、そんな事は普通は出来ない。普通なら。だが相手は普通じゃない、魔術師なのだ。たった一枚の紙、『呪符』と呼ばれる紙で、あの二人の動きを封じたのだ。
(これは、かなり・・・)
陰陽師。まさかここまで驚異的だとは思わなかった。そしてその陰陽師は何をしているのかというと・・・
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
ひたすら俺に向かって謝っているのだ。いや、それはいいんだ。それよりも一緒にいる女性がかなり問題だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、可愛い男の子、可愛い男の子・・・」
かなり血走った目で俺を見ているこの女性が、最大の問題だった。
しかも情けない事に、この女性に負けたのだ。
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