男の中の男

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「はい!そうなんすけど!ちょ、早くしないと、アレなんで!」 そういってカゴに入っているティッシュをポケットに詰め込み詰め込み、足りない分を手で鷲掴みにして、 「それじゃ、あの、すんません!」 そういい残して、俺はその場を走り去った。 「はぁ、はぁ、はぁ…」 どれだけ走ったのやら、気がつけば通りをそれて細い路地にいた。 百竹は自分の掴んでいるものを見る。 おおよそ、20個はあるだろうか。 ポケットに詰め込んだ分を合わせれば、50近くあるかもしれない。 「はぁ……」 大きく息をつく。 それでだいぶ呼吸も落ち着いた。 「よっしゃ、完璧…」 我ながらたいした行動力である。 だが冷静になってくると、だんだん自分のしたことが恥ずかしくなってくる。 彼女は何か困っているようだった。 だから俺はなんとなく助けてあげたいと思ったのだが… 「キモさはMAXやんか…」 これでは完璧に変質者だ。 まぁ、でもしょうがない… いきなりティッシュを全部下さいと言われれば、何事かと思うだろう。 大体、ポケットティッシュなんてものはそれにプリントされた広告に意味がある。 それを一人に沢山配ったところで何の宣伝にもなりはしない。
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