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ここで彼女の前を通り過ぎるということは、つまり、今後どこで出会っても自分はそうするということだ。
おそらくここが、「分岐点」なのだろう。
でも…わかっている。
多分俺は彼女に話しかけない。
心では迷っていても、もっと奥、潜在的な部分では、もうとっくに諦めている。
そうこれは、いつもの夢物語だったんだ…
一つ、軽くため息をついて、百竹は再び歩き出した。
何気なくティッシュをもらっておいてもいいが、もうカッコ悪いので止めておこう。
「…?」
ふと、再び足を止めて彼女を見る。
先ほどから、彼女は懸命にティッシュを配っている。
バイト先で支給されたのか、薄いパーカーのようなものを着ているが、正直あんなもので寒さを防げるとは思えない。
着膨れしていないところを見ても、彼女が薄着であることがわかる。
よく見れば、服の袖に手を入れて、指先を暖めようとしているようだ。
そうやって寒さと戦いながら、彼女はどれくらいあそこに立っているのだろうか…
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