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彼女は先ほどから、なにやらせわしく腕時計をのぞき込んでいる。
これから予定でもあるのだろうか。
だが、道行く人々はティッシュを受け取ろうとしない。
今時の子にしては珍しく、笑顔で配っているというのに。
その光景に、百竹は苛立ちを覚えた。
あんな子がティッシュを渡してくるってのに、何でみんな無視するのか。
俺だったら、まとめて五個はもらうぜ…!
…
なんだかほうっておけない…
俺は女を口説くことはできないが、困っている人を助けることはくらいはできる。
ようするに彼女はティッシュがあるからあそこから動けないわけで、ノルマとか達成出来ればもう帰れるんじゃないだろうか。
もし違うにしても、やらないよりやったほうがいい。
問題はどうやってやるかだが…
ストレートにいっては、なんかその、モロ気があるみたいで嫌だ…
こうなったら、自然に、かつ勢いが大事だな…
ええぃッ、南無三!!
「あの、ちょ、スイマセン、いいすか!?」
「あ、え?」
「ちょっと今大変でッ!!それ、ちょ、もらっていいすかね!?」
「え!?あ、はい、これ…」
「いや!あの~、はい、ちょ、それじゃ足りないんで!全部もらっていいすか!?」
「ぜ、全部ですか!?」
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