ある犬の話

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我が輩は犬である。名前はまだ無い。 なんちゃって、お茶目さんだろ? 俺の血統は凄いぜ?ジャックラッセルテリアって犬種らしいんだが、なんでも大英帝国からの舶来物らしいんだ。 テリアがメインで、ハウンド種やら何やら無茶苦茶な交配をしてるから一概にこんな見た目だ、なんざ言い切れないけど、大体は牛乳を極力ケチったミルクティと、夏の入道雲みたいな白のツートンカラーだ。多少の顎髭なんざ蓄えて、なかなか気品溢れる犬種なことは確かだね。気に食わねえが、名前もバンクってまさにイギリスの労働者階級みてえな名前だ。 名前の由来?頭にコインが入りそうな白い縦線があるだろ?だから貯金箱みたいだからバンクだ。 俺から言わせれば丘を駆け回る颯爽とした感じからのバンクの方が良かったな。爪の間をいつも真っ黒にした、しがない職工のダンナが決めたんだ。ダンナにしては上出来だと思うぜ。 さて、ダンナが仕事に出て行った。ここは田舎だからな。あんなダンナでもそれなりの広さの庭が持てる。柵で囲ってあるから俺は庭で放し飼いだ。 おい見ろよお前。そう、お前だ。読んでんだろ?俺の話を。車庫の裏の柵はな、茂みの下を掘ってるから外へ筒抜けなんだ。
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