第一章 日常

9/9
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「ふぁ~あ、なんかワケ分かんなかった。やっぱり寝ちまったよ。何だって?」 頭をガシガシ掻きながらリネットが話す。 廊下を歩いて自分の教室へと向かう途中だ。 「……人魔戦争。魔族が魔物と悪魔作ったんだと。それで、ヒトはシールで悪魔を封印した。戦争に勝ったヒト族は、魔族をダーラ大陸に縛り付けたってワケ。 今、敵だった相手が何をしてるか分からないって、とても大きな危険だと思うんだけど……」 「なぁなぁ、シールって?」 「そんなことも知らないのか!?」 「うん」 僕は盛大な溜め息をついた。 結構常識的なことだ。 例えば、ものの買い方だとか、リンゴとミカンの見分け方だとかその辺り。(のように僕は思う) 「シールってのは魔石の一種だ。魔物を封印する為の魔石のこと。初等部でも習ったろ?」 「二年も前のことなんて覚えてねぇよ。十二歳だろ? 勉強なんてさーっぱり」 「いや、言葉の常識なんだけど。……ちょっとは勉強したら?」 「っ、いいよなお前は! 天才でよ!」 リネットはそう言うと、さっさと走って行ってしまった。 「天才、か……」 リネットの背中を見ながら思う。 「何にも、知らないのにな」 拳を握りしめた。 次の授業は魔石の種類だったっけ。 ……急ごう。 二度と遅刻はしたくないからな。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!