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「ふぁ~あ、なんかワケ分かんなかった。やっぱり寝ちまったよ。何だって?」
頭をガシガシ掻きながらリネットが話す。
廊下を歩いて自分の教室へと向かう途中だ。
「……人魔戦争。魔族が魔物と悪魔作ったんだと。それで、ヒトはシールで悪魔を封印した。戦争に勝ったヒト族は、魔族をダーラ大陸に縛り付けたってワケ。
今、敵だった相手が何をしてるか分からないって、とても大きな危険だと思うんだけど……」
「なぁなぁ、シールって?」
「そんなことも知らないのか!?」
「うん」
僕は盛大な溜め息をついた。
結構常識的なことだ。
例えば、ものの買い方だとか、リンゴとミカンの見分け方だとかその辺り。(のように僕は思う)
「シールってのは魔石の一種だ。魔物を封印する為の魔石のこと。初等部でも習ったろ?」
「二年も前のことなんて覚えてねぇよ。十二歳だろ? 勉強なんてさーっぱり」
「いや、言葉の常識なんだけど。……ちょっとは勉強したら?」
「っ、いいよなお前は! 天才でよ!」
リネットはそう言うと、さっさと走って行ってしまった。
「天才、か……」
リネットの背中を見ながら思う。
「何にも、知らないのにな」
拳を握りしめた。
次の授業は魔石の種類だったっけ。
……急ごう。
二度と遅刻はしたくないからな。
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