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「お前が教師とはね…おまけに生徒会の担当顧問を希望したって聞いたぞ」
外の桜から目を外し、榊を見るとノートぐらいの大きさの封筒を差し出していた。
「はい。生徒会の顧問が決まってないって先日、挨拶に来た時に校長に聞いたのでお願いしました。この学園の卒業生だからやりやすいだろうって…直ぐに決まりましたよ」
封筒を受け取り、中身を見ると生徒の顔写真、名前などが載っている用紙が数枚入っていた。
いつの間に用意されていたお茶に気付き、榊は美味しそうに音を立てながらすすり出した。
「現在の生徒会のメンバーの簡単なプロフィールだ。覚えておいてくれ。…わざわざ、これを取りに来るなんて真面目になったものだ」
榊の言葉に苦笑いで答えながら一枚一枚めくり、生徒の顔と名前を一致させていく。
最後の一枚に目を通した時、男の動きがピタッと止まり、写真から目が離せなくなった。
「…東城…百花」
「ああ。一年生だが副会長をしているよ。今年卒業した兄が生徒会長をしていてな…お前達の卒業式以上に派手な卒業式だったぞ」
『あんな二人は二度といないなぁ』と卒業式を終えてそんなに過ぎてもいないのに、懐かしそうだ。
「俺達より上をいくとは…余程だったんですね」
榊の相手をしているが、目線は百花の写真を見つめている。
その顔には笑みが見られる。
「先生、ありがとうございました。この資料はお借りしていきます。では、新学期からよろしくお願いします」
「ああ、頼むぞ。谷口先生」
一礼をすると
職員室を後にした。
廊下を歩く『谷口』の顔から笑みが消えない。
「だから言っただろ。俺の勘は当たるって…これは運命だよ百花ちゃん」
谷口 綾人【タニグチ アヤト】の
足どりは、軽かった。
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