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伊南川「…どうしてあんな無茶なことしたんだ…もう建物も無くなってるんだから、こんな場所…親父には関係ないだろ?」
利則「…勝…父さんにとって、ココは…ただの"妃鳳園跡地"じゃないんだ…」
伊南川「…え?」
父親の言葉に、伊南川は首を傾げる。
利則「…亡くなったお前の母さん…妃鳳園の経営が傾き出してから、体調崩して寝込むようになっただろう…それで、父さんが看病していた時に…母さん、こんなこと言ったんだ…"こんな大変な時に看病なんかさせてごめんよ"って…」
皆「……」
利則「…だから、父さん…母さんに約束したんだよ…"必ず妃鳳園守るよ!"って…"だから、早く良くなれよ!"って…」
南条・国本・枕元
「……」
心霊現象にビビりまくっていた3人は、今度は感動して涙ぐんでいる。
伊南川「…だから、あんなことを…でも、気持ちは分かるけど…母さんはきっと喜んでないと思うよ…」
利則「……」
伊南川「…母さんが望んでいるのは、ただ1つだけ…父さんが元気で長生きに暮らすことだよ…」
利則「…勝…」
伊南川「…こんな何も無いところなんかいないで、温かい家に早く帰ろう…」
伊南川の優しい口調に、利則は頷いた。
利則「…皆さん…ご迷惑をかけてすいませんでした…」
利則は探偵達にも頭を下げ、勝と共に小屋から出ていった。
南条「まさか、"心霊現象事件"に…あんな事情があったとはね…」
国本「…いい話でしたねぇ~…涙が染み込んだハンカチがもう重たいですよ…」
そう言うと、国本は、流れる涙をハンカチで拭った。
枕元「…それにしても、あの利則さんの仕掛けた"心霊現象"…リアルやったで~…何で、あんな演出出来たんやろなぁ…」
渋澤「それなら、あの新聞に載っていた…」
草川「…彼は学生時代に演劇部の音声や特殊効果…さらには衣装まで担当していたらしいぞ…」
ダニエル・クリスティ
「なるほど~…」
早坂「…だから、霧を発生させたり、不気味な呻き声を響かせたり、幽霊に変装して写真に写り込んだり出来たのか…」
早坂はそう呟き、深く納得した。
南条「ま…あんな親子愛も素晴らしいけど、やっぱり"愛"って言ったら…恋愛の"愛"よねぇ~!!」
南条は、国本の腕に抱きついて言った。
国本「ゆ…優香里さん…そ、そうですね…やっぱり…"愛"は…恋愛の…"愛"…ですね…」
南条の急接近に、国本は緊張でガチガチになった。
早坂「国本…そろそろ慣れようぜ…」
早坂は呆れながら、冷たく国本にツッコんだ。
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