01---卒業前夜

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  「お前、喧嘩相手いたぶるの好きね」 「日向みたいに可愛かったら優しくしたげるんだけどね?」 いやー、うん、遠慮する。そう苦笑して首を横に振った。太陽の『優しく』は、全然優しくないのだ。 昔からこいつの愛情表現は少し歪んでいる。気に入ったものをいじるだけいじって、それでいてすぐに飽きるし。 っていうか、可愛いってなんだ。そこが一番引っかかった。 「そういう事言うのは俺に一回でも勝ってからにしなよ」 太陽の胸に指を突き立て、下から見上げて笑って見せた。広い胸板はいかにも包容力がありそうで、少し羨ましい。 「えー、無理無理。日向ってば可愛い顔して喧嘩強いし。容赦ないし」 「可愛いばっか言うなよ! 気にしてんだぞ」 身長一六二センチメートル、体重四八キログラム。そこら辺の女子よりよっぽど線が細いのは、自覚している。
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