廃市で生きたこの“僕”

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丁度、屍達の血を洗い流したところで雨は止んだ。 ――・・・土が赤黒く変色し、48の屍の上に僕は立ち、あぁ、なんて醜いほど綺麗なんだろうと、矛盾した考えの中、浮いている空に張り付いた虹を眺めていた。 “僕”は。 空に問いた。“僕”に問いた。 “僕”はどうして生まれた? “僕”はこれからどうしたい? 勿論、また読書を気ままにしていたい。 “僕”はこれからどうしたい? だから読書を気ままにしていたい・・・って――――・・・。 あぁ、そういう意味。“僕”は。 “僕”は『宮神山賭』をどうしたかった? 返り血でこれまた赤黒くお互いなっている服。 宮神山賭は僕を見つめていた。 醜いかい?酷いかい?拙いかい?赦さない?屍の上に平気に立つ、この“僕”を。 どう思う。 醜いだろ?酷いだろ?拙いだろ? 滑稽だろ? 僕は宮神山賭に今度は問いた。 何とか言えよ――・・・と。 答えは。 「助けてくれてありがとな。しゃあない、墓掘るの手伝うぜ――・・・」 こうして、僕は初めて“敵”の墓を作ることにした。 僕はそして初めて“人間”の言うことを素直に聞き入れた。 ――沢山の話をした。墓を掘りながら。 「亜って、いつもこんな生活してんの?」 「・・・・・・昨日も同じようなの来て、三人中一人殺して返り討ちにした。・・・これ聞いて引かない?」 「別に~。さっきはもっとすげぇもん見たし。亜ってつえーよな。俺全っ然ダメ。超弱いの」 「・・・」 ―ザクッ。 スコップの動きを止める。 「ん?どした?亜」 「君も“敵”なら殺すよ。容赦なく簡単に。君、実はどこかのマフィアのファミリーのスパイでしょ?僕が気を許すのをうかがってる。で、僕を殺すんだ。だろ?」 「そーだなー、獄寺みたく強くなりてぇなあ。亜みたく強くもなりてぇ。あ、リボーンみたくなりてぇ。かはは、おしゃぶりつけて。んで京子ちゃんみたく可愛い彼女欲ちい~。マフィアのファミリーのスパイかあ、かっけー☆でも俺そんなのじゃないし。唯のボンボン。かっちょ悪」 「真面目に答えてよ」 「だぁかぁらあ、俺は唯のボンボンです。お前みたく物騒なもん、ひとっつもないし。信じろよ」 「・・・今のとこ信じてやる」 「じゃあ、バイト代。墓作りのバイト代」 「は?」 「俺と友達になってよ」 答えは。僕の答えは。 ――結局二人で作った墓ってのは、只の大きな穴で夕方まで作業した。 “僕の答えは。”
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