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さあ、賭けよう。
ガタリと用意された椅子に座る。嵯峨野博打と向かえ合うように。
「・・・僕が勝ったら僕にちょっかいださないでくれる?今日はそれを頼みにきたんだ」
「“勝ったら”・・・だがね」
「担保は?」
ニヤニヤしながら嵯峨野博打は指をいじる。
「勿論、君の希望、ちょっかい今後明日から出さないようにするよ」
・・・こいつ。
「僕の担保は・・・
こいつを賭ける」
グイッと横に静かに立っていた宮神山賭の首根っこを掴む。そして引き寄せた。
「ぐえ゛・・・っ?!」
嵯峨野博打の眉がひそむ。
「それはルール違反だ。君は担保に“自分”を賭けなきゃいけないはずだ。そんなやつ要らないね」
「僕も賭けよう。こいつは道連れ、おまけさ。」
「どゆこと?!亜ーくん?!俺関係無くね?!!」
「貰ったら僕共々好きに使えばいい。いたぶるも苛めるも部下にするも下僕にするも、好きにすればいい」
「嘘ーーーー?!!」
「・・・まあいいだろう。どうせ勝つのは・・・―――」
「僕だ」「私だ」
見事なハモりに嵯峨野博打はその言葉に舌打ちした。
「おい、トランプを持ってこい」
あちら側の打ち合わせの中、僕はもう一つ賭けを申し出た。嵯峨野博打じゃない。相手は―――・・・
「宮神山賭」
「ほえぃ?」
首根っこを掴んだまま小さな声で会話する。
「賭けをしようか。君が賭けろ」
「はい?僕もうチキンハートなんでドッキドキで、未成年は賭けなんかしちゃいけないんだよ」
「びびって良い子ちゃんぶるな。文章もおかしいぞ。いいか。君にとって、とても利益になることだ。さっきも言ってただろ?フルネームで呼ばれたくないって」
「!!」
にやりと僕は笑う。
「僕が負けるか、勝つか、賭けてみろ。当たったら下の名前で呼んでやる」
ぱああっと笑顔になって小声で力強く言った。
「勿論“勝つ”方で!!」
「よくいった。“同居人”」
トンとテーブルの中心にトランプが置かれる。
では、賭けようか。
自分という人生の“命”を。
他人という人生の“命”を。
ゲームは、既に始まっている。
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