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黙々と。黙々と。
「赤」
――ペラ。当たり。130点。
「黒だね」
――ペラ。当たり。これまた130点。
赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒赤赤赤黒赤黒赤黒黒赤赤黒黒黒黒黒赤赤黒赤赤赤黒黒赤黒黒黒赤赤赤黒赤黒―・・・。
「――・・・やはり君、見ていたね。ひひひ・・・。その目で。また当たてていたら君は種と仕掛けをもつマジシャンだ。ひひひ・・・ひひ、ひひひ・・・。お互い様だね」
嵯峨野博打は残り二枚というところで、話しかけてきた。
やはりバレるもんか。
「そっちこそ、あのきり方、マジシャン?初めて見たよ。あんな綺麗で見事なきり方。敵ながら天晴れってやつだ」
ひひひと笑う嵯峨野博打。ポーカーフェイスはどちらだ。
答え、どちらも。
「・・・笑える」
背凭れに僕は凭れる。神経を使う。疲れてきた。僕だって見なければ、当てられない。だから全て勘と運任せだ。でも―――・・・。
僕、30(点)×25(枚)、計、850点。
嵯峨野博打、30×25、計、同じく。
850点。どちらも全て当てた。全てだ。これは運なのか?見事な奇跡。マイナスはない。
奇跡。
本当に奇跡を起こさないといけないのはこれからだ。
残り、二枚。
スペードのエースとハートのクイーン。
宮神山賭には、悪いけど。いや、悪くない。悪くないか。これは二人で一つの賭けだ。二人で一つの利益だ。
宮神山賭の場合、僕との賭けもあるから二つか。
賭けに出るよ。僕は。
この時、僕は嵯峨野博打より、自分の勝利について考え過ぎていて、見ておけば良かった。
嵯峨野博打の最高の笑みを。
僕は再び言う。
「スペードのエース」
後悔は・・・しなかった。
引くまでは。
――・・・パラリと。“二枚”のトランプが残る。
それはおかしい現実。現状。
僕が引いたのは。
「ひひひ・・・ひひひひひひ!」
ピエロは笑う。
嵯峨野博打は、笑う。
僕が引いたのは。
ジョーカー。
絵柄はピエロ。
嵯峨野博打は言う。
「ハートのクイーン」
――・・・刻まれるは勝利。900点。
これが現実、現状。
敗北。
一人のピエロは笑う。一枚のピエロも笑う。
――・・・敗北。
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