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5.道化師はどうやら飽きたようだ。
首輪は重くない。壁から簡単に外せた。付いたままだけど。
さて、これで自由がきく。
「―――・・・せーの」
ガシャーン!ガシャーン!ガシャーン!ガシャーン!
地下何階。破壊音だけが木霊する。人は・・・誰も来ない。何故?まあどうでもいい。
ガシャーン!ガシャーン!ベキ・・・ッ。
「ふーっ。一本折れた」
足の重りを檻にぶつけること早30分。足がそろそろ交互にぶつけてたけど、250キロはさすがに足にくる。
「亜ーくんすごーい・・・。きゃっ☆賭惚れちゃーう」
部屋の端で宮神山賭は見物をしていた。
「・・・君も逃げたいなら、手伝うとか出来ないのか?そんな50キロくらい軽いだろう?」
「いやいや、亜、やっぱスゲーは。そりゃ50キロくらい軽い方だけどさ。亜に比べれば。でも亜ってどこにそんな力持ってんの。そんな痩身な身体に。あ、あれ、実はD.グレ、リナリーのダークブーツ?」
「はっ、宮神山賭、君は“平成”の漫画だけはよく知ってるみたいだね。しかも、ジャンプ系が好きと見た。君と生きてきたルートが違うだけだよ」
ガンッ!
――・・・最後の一発。
鉄格子に2、3本のひびが入る。
後は・・・さて、どうするか。
“やるか?”
“やらないか?”
「宮神山賭」
「はい?何すか?亜ーくん」
「こっち、見ない方が良いよ」
刹那、僕は鉄格子にがぶりついた。
考えたら、こっちの方が早かったか。
「ひぃっ?!」
ベキベキベキベキ・・・。ガシャン!
檻に、人一人分潜り抜けられる穴が開く。
「よし」
口を鉄格子から外す。鉄格子は勿論歯形つき。
「きゃーーー亜ーくんの化け物!!何その歯の力!きゃー!?」
化け物。
化け物・・・か。
久しぶりに聞く名だ。
『人喰い』、
『化け物』、
僕。
どれも僕を指す言葉達。
哀れ?憐れ?
「――・・・んなの慣れっこだよ」
「?亜ーくん?亜?どした?顔真っ青。・・・行こうぜ!亜!」
ぐいっと宮神山賭は僕の手を掴む。
・・・あったかい。
不思議。不思議?
「よっ」
先に僕が開けた穴を潜り抜けた宮神山賭は笑う。
宮神山賭。
こいつは、不思議。
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