道化師の遊び

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地下三階の踊り場に達した時、僕は宮神山賭が追い付いてくるのを待って言ってやった。 「――・・・僕だって同点に追い込もうと最後の一枚を引いたさ。もう最後の一枚だから何のカードかわかってたしね。けれど・・・」 引いたカードは違った。 「・・・どゆこと?亜ーくん」 「・・・はっ、簡単さ。僕がジョーカーを引いた瞬間にあの“手さばき”さ。ジョーカーに気を取られているうちに今まで引いたカードから一枚引き、すり替えたのさ!」 「なっ・・・、マジかよ・・・?」 「君は見てないから分からないけど、あの“手さばき”だ。隙が相手に出来れば、“いつでも”出来る。――・・・つまりはこういうことさ」 キッと監視カメラを睨む。 「点数稼ぎが運試しがゲームの真髄じゃない。嵯峨野博打がいかに上手くジョーカーをトランプの山に入れ、いかに相手に気付かれずカードをすり替えるが、あの“クラウン・ゲーム”の真髄って訳さ。クラウン、・・・道化師は嵯峨野博打、あんたのことだ!」 ―・・・ヒュッ!ガシャーン!! 僕はそう言った後遠心力を使って足の重りで監視カメラを叩き割った、否、ぶち壊した。 「ぎゃあっ!何してんの、亜ーくん!!今めっちゃ怖かった!髪かすったもん。きゃー!私の見事な黒髪がっ!」 「・・・どうせ、脱出したのは、バレてるんだ。一つくらいストレス解消に壊したっていいだろ。あー、すっきり」 「人の話聞いてます?!」 「聴いてるか?嵯峨野博打」 「はい?」 「盗聴機の部分だけ壊さないようにカメラを潰した。なあ、嵯峨野博打、まだゲームは終わってないぞ」 終わらせてやるものか。 「僕はカードをすり替えていいなんてルール、聞いちゃいない。それはずるだ。じゃあ、僕も勝手にルールを作るよ。僕がまあ、宮神山賭と逃げ切ったら勝ち。あなたの負け。担保は、 “僕”。 あなたの担保は勝手に決めさせてもらう。 担保は 勿論、“狗釈放”だ。」 ――・・・ピーガガッ。 盗聴機から音がする。声が、する。 「・・・いいだろう。いいだろう。上で待っているよ。楽しみ愉しい、楽しみ愉しい・・・」 「ぎゃっ!しゃべった」 「今度こそ、勝つのは・・・」 「私だよ」「僕だ!!」
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