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――――・・・仮面舞踏会気取りかと思うほどの派手な宝石の埋め込まれた、目元だけを隠す仮面。化粧をしていて肌は白。唇は―――・・・紫。(口紅だけど。)
大きな襟にレースが刻み込まれ、これだけでも、幾らかかったか、恐ろしい値段だと、この“廃絶”の世の中、思うほどだ。
後はサーカスのピエロのような市松模様の服。しかし、その滑稽な服装は嫌なほど似合い、嫌なほど似合わない殺気がびりびりとする。
ピエロとは違うところと言えば―――・・・漆黒の長い黒髪。
滑稽な姿は、より恐怖を与えるものだった。以上、
「敵の容姿・・・・・・っ!」
がきん――・・・と両手を束縛する鎖を歯で“喰い”千切る。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「はっ、・・・はっ、っ、はっ、はっ、げほ、げほ、はっ、はっ・・・」
地面で宮神山賭はのたうちまわっていた。
この場の気に当てられたのだろう。過呼吸を起こしている。
一刻も早く、こいつをここから離れさせないと。
なぜ?
「・・・・・・」
なぜ、そこまでこいつを庇う?
「・・・・・・」
なぜ?
「・・・僕が知りたいよ。・・・さあ?同居人だからじゃないか?」
大切なんだろう?
「・・・・・・」
初めて、自分に好意を寄せてきたのが嬉しかったんだろう?
「・・・・・・」
大切なんだろう?
「・・・知らないね。自問自答もここまでくると、二重人格だ・・・」
「おいおい、“ヒューマン”、私との会話は嫌ですか?“ヒューマン”」
“ヒューマン”。
ピエロに僕はここで初めて言葉のキャッチボールを返す。
「随分と懐かしい名で呼んでくれるじゃないか。道化師もどき」
「・・・ピエロ、とお呼びください。以後、お見知り置きを」
「・・・ヒットマンか」
「いえいえ、私はしがない愚かな道化師でございます」
「はっ、嘘は結構嫌いな方だ」
体勢を、低く構える。まるで狙いを定めた獣のように。
臨戦体勢ってやつだ。
「はっ、はっ、・・・~~っ!」
「宮神山賭・・・、聞こえるか?」
返答を待たずに僕は言葉をつむぐ。
「三分・・・、待てるか?」
車は奴等の後ろ。鍵は付けっ放しだからいつでもいける。ガソリンが抜かれてなければ。
「三分で、逃げ切るぞ」
息が荒い中、宮神山賭は親指をぐっと上へ上げてみせた。
よし。
ゲーム、スタートだ。
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