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喰い千切った、はず、だった。
被服を千切る音。
ひざにある骨の感覚。筋肉と脂肪の味。
皮膚の柔らかさ―――・・・全てが、全てが違った。被服を千切る音以外。全てが。
今までの経歴が、戦歴が、頭が警鐘を鳴らす。
生きているなら当たり前のことが。あの現象が起きるはずだ。
“血が、出ない。”
血が出ない。
そう、自覚した瞬間、腐った匂い、味がした。
「!!!!」
口から歯形のついたひざから下の足を離す。
「気持ちが悪い物を喰い千切ってしまった・・・。くそっ。」
ごろん、ごろごろごろ、ぴた。
「やはり、血糊でも付けておくべしたか。くす、くすくす・・・。その生肉のお味はいかがですか?」
ぺっと唾を吐き捨てる。
「何が生肉だ。“死人の足”なんかダミーに使いやがって・・・。吐きそうだ。」
にょきり!
“畳まれていた”足が、本物の足が、にょきりと出る。
「ピエロがっ・・・!!!」
「種と仕掛けを合わせもつのは当たり前でしょう?そうです、そうです。私は、“ピエロ”」
動く時、動作をする時は本物の足を地に着けて、停止した状態の時はそのだほついたもものところに入れてある死人の足と転換する・・・。
「察しの通りでございます。手にも、もう片方の足にもありますよ?だから重い重い。いつもナマケモノのような動きしか出来ません。ああ、速く動いてみたい・・・なんて」
くすりとピエロは嘲笑う。
畜生。
腕に激痛が走る。
落ち付け。こんなことに惑わされるな。
今まで潜り抜けてきた修羅場はどうした。
―――・・・ふっ。
種と仕掛けか。
「それ、利用させてもらうよ」
今回の賭けは僕の勝ちだ。
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