廃市で生きたこの“僕”

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味噌汁の中に投げてしまったのは、せっかくまた買った『神様のボート』だった。ショック。 ――・・・今日の天気は曇り。雨の匂いがするし、直に雨が降るだろう。 だから今日は愛車の中で読書。今日は漫画。何かというと――・・・ 「おっ!リボーンじゃん!俺好きなんだよ。獄寺」 「・・・・・・勝手に僕の愛車に入って来ないでくれる?」 邪魔な奴がきた。あぁ、もううんざり。 「いやだって雨降りそうだし。助手席いいかー?」 「駄目」 「おっ邪魔しまーす」 人の話聞いてる?この野郎、僕の愛車の助手席に勝手に座りやがった。 「ん、やっぱいいね~この車。“平成”の車だろ?俺レトロな車、大好きなんだよ~。キューブも好きだ。亜は何好き?」 「・・・・・・」 「おい、無視すんなよ~。なあ?俺と言葉のキャッチボールしようぜ☆」 「でてけ」 「はい?」 「でてけって言ったんだ。今は何時だと思う?答えは午前10時27分。長く居すぎだ。君みたいのがいると迷惑なんだ。僕は一人が好きなんだ。そうだな、リボーンでいう雲雀恭弥の“群れるのが嫌い”なんだ。むしろことごとく大嫌い。この廃市から去ってくれ。僕にその顔を二度と見せないでくれ。さあ、でてけ。退け。去れ」 「・・・・・・ひっでぇ。マジ傷付いた。そんなに俺が嫌い?」 リボーンを読みながら宮神山賭に即答した。あぁ、大嫌いだと。 人間なんか消えてしまえばいいと。僕だけの世界が欲しいと。切に願っていると――そこまでは言わなかったけど。 シーンと宮神山賭は静かになった。 「・・・解った。出てくよ。まあ、初対面のシーンがシーンだったからな・・・。だから嫌いなんだろ?あれは悪かった」 違う。僕は元々人間が嫌いなんだ。あんなことをされて嫌いになった訳じゃない。まあ、あれはショックだったけど。 傷付く物は嫌い。 脆い物は嫌い。 だから人間は嫌い。 なので人間は嫌い。 要するに人間は嫌い。大嫌い。 「ガスコンロ勝手に使って悪かった。本破いて悪かった。じゃあ・・・行くな。でもさ・・・、 俺、お前とは友達なれるって思ったんだ」 「・・・・・・」 親しみ。親しい者。傍にいるもの。友情、友人、 “友達”。 「昔っから俺こうなんだよなあ。あんまし人と出逢ったことねえから。ごめんな。それじゃ」 こうして、宮神山賭去っていった。 ――・・・数分後、宮神山賭は大勢の人、“群れ”に囲まれ戻って来た。
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