廃市で生きたこの“僕”

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2.厄介な事は厄介な奴が持ってくる。厄介な奴は厄介な奴等を呼ぶ。 宮神山賭が50人の人間を引き連れて来た時、なんとも丁度良く雨は降りだした。 「・・・・・・えと、よぉ」 宮神山賭の挨拶に僕も車内から答えた。 「・・・・・・よぉ」 ―――・・・ぽつぽつぽつ。ぽつ。ざー。 雨は勢いを増した。ここからじゃ、これからの“返答”に聞きにくそうだ。いや、耳は滅茶苦茶いい方だけど。バタンとドアから出る。宮神山賭はもうずぶ濡れだ。 しかしそんなこと、どうでもいい。 「なぁ、亜。この人達、君のお友達?・・・めっちゃ怖いもん持ってんだけど・・・」・・・・・・引き連れて来た訳じゃ無いのか。 引き連られて来た訳。 昨日来たような黒づくめ、チンピラ、侍、ハンター、賞金稼ぎ、ヒットマン(殺し屋)。 「・・・そんな奴等、知らないよ。宮神山賭、あんたのお友達だろ?」 「いやいや、僕“友達”居ませんから」 ・・・意外。 「・・・統率者は誰だ?」 「はい?」 「宮神山賭、お前には訊いてない。・・・統率者は、この雇われ主に一番親しい、このメンツのボスは誰だって聞いてんだ。出てこい」 何処かのマフィアの雇用人だな。でも見たところ、弱いな。 弱い弱い弱い。昨日の奴等と同じ程度だ。 弱い。 でも一人、“何か”いる。いる。 「俺だぜぇぇぃ」 全身ピアス――・・・といってもいいだろう。上半身裸、耳にピアス、鼻にピアス、口にピアス、腕に刺青、へそにピアス。なんとその数71個。 でも、こいつなんかじゃない。もっと、もっと厄介な奴が、いる。 「お前じゃない。退け」 「おおっとぉ、そんなこと、言っても言いのかあぃ?」 宮神山賭に黒づくめが寄る。寄ったのは黒づくめだけじゃない。 ちゃきりと、宮神山賭のこめかみに銃を当てた。 「友達が消えるぜ」 「友達じゃないし。撃てば?」 あっさりと僕はそう言った、瞬間動いた。 虚を衝くとはこのことだ。100メートル走。 ――パァン。 「・・・・・・がっ」 宮神山賭に目をやる。目が合う。 いいか。よく見ておけ。 これが“僕”だ。 『全身ピアス』のこめかみに一発。さあ、レッツ即死。 さあ、始めよう。 「ボスは死んだよ。さぁ、次は誰が死にたい?」 48人。『全身ピアス』以外に一人、この瞬間欠けた。厄介な奴だな。速い。ぴりぴりしなくなった。平穏な雰囲気になったようだ。 「狙いは僕?それともそいつ?」 48人が一斉に構えた。
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