世間知らず

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トイレに行って、一回吐いた。   口ん中がフリスクの味で頭が痺れた。   会社のおばちゃんがトイレに入ってきたので、あたしは何事もなかったかのように、トイレから出て、自分のイスに座る。   あたしが嫌いな子達が   「あゆみ、ヤバイんじゃない?」   と、話してるのが聞こえた。   あたしは   「大丈夫ですよ~❗」   と、手の平をヒラヒラさせた。   次の瞬間、あたしはイスから転げ落ちていた。   「大丈夫じゃないじゃん❗」   女の子達にそう言われ、あたしは自分の行動に恥ずかしさを隠しきれず、またトイレへ向かった。   「カッコワルイ…」   手を洗いながら、鏡に映った自分の顔を見て、そう呟いた。   「もう、先に帰ろ」   そう思って、あたしはトイレを出ようとした。   「ガチャ❗」   同じ会社に勤めている37歳の坂本さんが入ってきた。   ここのバーのトイレは男女共用。   だから男の人が入ってきてもおかしくはない。   「あ…ごめんなさい。今出ますね❗」   あたしはバツが悪そうに、坂本さんの横を通り抜けようとした。   「ガシッ❗」   腕を捕まれ、あたしの頭ん中は「?」でいっぱいになった。  
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