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「起きなさい、朝よ」
そんな優しい母の声で、俺の朝は始まった。
「今日から修業の旅にでるんでしょ?」
「あぁ、そうだったっけ」
俺はまだ重い目蓋を擦って起き上がり、覚束ない足取りでダイニングへとむかった。
ダイニングにはテーブルがあり、その上にはトーストが置かれている。
俺は椅子のひとつに座りトーストに食らい付いた。
起きたばかりだからなのか、まったく味がしない。まぁいいか。
トーストに食らい付いてから少しすると、父さんが二階から降りてきた。
「おう、我が息子よ。ようやく旅立ちだな」
父さんの頭から察するに寝起きだな。寝癖ついてるし。あんまり威厳ないなぁ。
「これは父さんからの餞別(せんべつ)だ。受け取ってくれ」
そう言ってトーストをかじり続ける俺が渡されたのは刀だ。鞘に納められたそれは予想外に軽かった。
「はりふぁと」
俺はお礼を言ってからトーストを飲み込み、近くに置いておいたリュックを手に取った。
旅の荷物を詰め込んだリュックだ。
「気を付けてね」
「死ぬんじゃないぞ」
俺は二人の言葉を背に受け、リュックを背負った。そして一度両親に微笑んでから玄関へ向かい、扉を開いた。
別れがあっけない気がするが、まあ気にしない。
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