非情な現実

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「起っきろ~」 「ぐぼはぁ!?」  突然の衝撃、それは鳩尾にだった。  俺は人のものとは思えない声を出し、身を捩(よじ)る。そして愛用のベッドから転がり落ちた。  ………あれ?ここはどこ? 「あれ?修業は?刀は?銀髪の美女は?」 「お兄ちゃん………痛いよ」  床に転がりながらぼやく俺に、妹―――柳田香織(ヤナギダカオリ)が哀れみを込めた漆黒の瞳を向けている。  そうだ思い出したぞ。俺は柳田龍也(ヤナギダリュウヤ)、黒髪黒瞳の冴えない高校一年だ。まあまだ高校に入ってから日は浅いけど。  そして俺の鳩尾に全体重を乗せた肘を叩き込んだ女は妹か。黒髪黒瞳のツインテール少女だ。中学一年にもなってブラコンの困った妹なんだけども、可愛い妹でもある。  毎日起こしてくれるのも嬉しいが起こし方には問題があるな。  にしてもあれは夢かぁ。どうりで味も痛みもないし、話の展開も急なわけだ。  けど本当に痛い夢だな。ゲームのやりすぎはいけないってことか。 「お兄ちゃん、もう朝ご飯だよ」 「わかった。着替えたら行くから先に行っててくれ」 「はーい」  香織は素直に返事をすると、ドタドタと音をたてて俺の部屋を横断し、扉を開いてすぐにある階段を降りていった。  ………さてと、着替えるかな。まだ鳩尾が痛いけど。
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