非情な現実

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「おはよう」 「あらおはよう。はやくご飯食べちゃってね」  俺をダイニングで迎えてくれたのは柳田織香(ヤナギダオリカ)、俺の母さんだ。  年齢のわりには若く見え、家事もできるいい母さんだ。母さんも黒髪黒瞳で髪は背中の半ばで切り揃えられている。近所の噂をいち早く仕入れるあたりはおばさんくさいけど。  俺は適当に返事をして、テーブルを囲むように置かれた椅子のひとつに腰掛けた。  ちなみに俺の向かい側には母さんが、隣には香織が座っている。香織の向かい側には父が座るはずなのだが、今は長期出張のため家にはいない。近々帰ってくる予定だ。 「香織、ちゃんと魚の肝臓も食べなさい」  俺が食事にとりかかろうとすると、母さんが香織に言う。  香織は魚のぶにぶにした気持ち悪い部分を箸で器用に取りのぞいている。母さんの注意にも渋っているようだ  ってか母さんも肝臓くらいは許してやれよ。  そんな俺の心も無視して母さんは俺に合図を送てくる。  仕方ないなぁ。 「香織、食べなさい」 「うぅ、はぁい」  香織は苦々しい顔をしながらも肝臓を口に運んだ。全身に鳥肌が立っているのを見ると同情するなぁ。  大きくなれよ、香織。
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