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「そうそう、今日あんたの学校に転校生がくるわよ」
俺が茶わんを手に取り、香織が肝臓を飲み込むと、母さんはテーブルに身を乗り出して言った。その瞳は輝いている。さすが近所で情報屋の称号を持つだけはあるな。
「へぇ、どんな人?」
「家のお隣さん」
「ぐぶっ!!」
俺は口にしていた魚を吹き出しそうになり、無理矢理飲み込んだ。しかしそれが裏目にでて魚の骨が喉に刺さった。
俺は慌ててご飯を口に掻き込み、お茶でそれを流し込む。隣では香織が背中を叩いてくれている。
「と、隣は空き家じゃなかったのか!?」
「三日くらい前に越してきたわよ。それとね………かなり美人だったわよ」
最後のほうは多少含みのあり言い方だ。
俺は涙目になりながらお茶を啜り、母さんのほうへ向き直る。
「あんた、落としなさい」
絶対に言うと思ったよ。
母さんは美人を見ると必ずこう言う。俺の年齢が彼女いない歴と同じだからといってそういうのだ。俺には恋愛の自由もないのか。
「ちょっと変わった外見だったけど美人には変わりないわ」
なんか少し矛盾してる気がするがまあいいか。
「気が向いたらね」
俺は内心気が向くことは絶対にないと思いつつもそう言った。
香織がちらちら横目で見てくるが、それも気にしない。
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