非情な現実

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「んじゃ行ってくるわ」  俺は朝食が終わると、すぐ近くに立て掛けておいた鞄を手に取り、玄関へ向かった。そしてすぐに靴を履き扉に手を掛ける。 「いってらっしゃい。途中で大型トラックに撥ねられないようにね」  ずいぶんと細かい注意だなおい。  俺は母さんの注意を適当に聞き流し、家をでた。  ここから学校まではあまり遠くはない。歩いて十分位でつく距離だ。ただ学校付近に出るまでは大通りがない通学路なため、人数が少ない。まあまれに近所の人がいることもあるが、どちらかというと不良のほうが出現率が高いな。  そんな通学路を少し歩いた所で事件は起きた。 「キャァァァァアアア!!」  突然の悲鳴、それは高く綺麗で透き通るような声だったが、悲鳴には変わりない。  でもこの声、どっかで聞いたような………。まあいいか。とにかく行ってみよう  俺は悲鳴のしたほうへと駆け出した。 「ようようねーちゃん可愛いねぇ」  悲鳴が響いた場所にはいかにも不良ですよ的な学生三人と、地面にへたりこんだ女性が一人いた。  チンピラはまさに不良の髪型リーゼント、まさかいまどきリーゼントがいるとはな。しかも超ベタな絡み方だし。  そして女性、これには驚いた。艶やかな銀髪を腰のあたりまで伸ばした美女、夢にでてきた女性だったからだ。  なるほど。聞いたことのある声は夢の中で聞いたのか。  ただ女性は俺の通う学校の制服を着ていた。そして美しい翡翠色の瞳には涙を溜めている。
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