最初は同じ

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夏にしては今日は肌寒く感じる。それもそのはずだ。空一面が、真っ黒な雲に覆われている。 …一雨くるな。 キャンプボーイだった僕には分かる。いや、これはキャンプボーイじゃなくても分かるか。 僕は今、船の甲板にいる。 中学の卒業旅行で、何人かの友達と遠出をしている途中だ。 さっきまで船の中で話をしていたのだが、船が進むにつれて段々揺れが激しくなってきた。 元々、乗り物に弱い僕は耐えきれずに外へ出てきたのだ。 薄情なことに、誰もついて来てはくれなかった。 『潮の匂いでますます気持ち悪い…これじゃ、中にいた方がましだ―』 手すりに寄りかかり、深く息を吐く。じっと海面を眺めると、真っ暗な海が息ごと僕を飲み込もうとしているようだった。 『あの…大丈夫ですか?』 もう戻ろうかと思った矢先、誰かが声をかけてきた。 ちょっと低めの女の子の声。 振り返り、声の主を見る。 まず、長い髪が目についた。腰までとどきそうなその髪を二つにまとめている。動きやすそうな服を着ている。丈の短いズボンからは、スラリと長く細い足がのぞいていた。 ボーッと足に見とれていると、 大丈夫ですか? と、大きな目で覗きこまれながらもう一度問いかけられた。 『あ…うん。大丈夫だよ、ありがとう』 答えると、安心したようにニコリと笑った。 『そう。良かった』 そう言ってから、女の子が回れ右をし中に戻ろうとした途端、突然だった。 すごい雨が振り出してきた。
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