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雨粒のせいで目が開けられない。乾いていた床は、あっという間に水浸しになってしまった。
波も激しくなり、小さい船なので揺れもひどい。立っているのがやっとだ。
早く戻らなくちゃ…
そう思い船の手すりから手を離すと、前方から
どちゃり、と誰かが滑りこけた音が聞こえてきた。
『いたー…』
薄目を開けて見てみると、女の子が必死で立ち上がろうとしているのが見えた。
しかし風も吹いているからなのか、上手くいかないらしい。
『大丈夫?』
『あ、ありがとう!』
手を差し出すとグッと握り返してきた。
立ち上がった彼女が体重をかけてくる。
と同時にひときわ強い風が吹いた。
椅子がが音をたてて倒れる。
『っきゃわぁあ!』
ドンッ
その長い足によく映える、ヒールの高いサンダルのせいだろう。
風と雨のせいですべりやすくなった床に足をとられ、女の子が僕に倒れかかってくる。
僕のすぐ後ろには、僕の胸ほどの高さしかない手すりと、真っ暗な海しか、無い。
『う、あぁあああああ!?』
『キャァァァアアァアア!』
僕らは海へ落ちていった…
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