第一章

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    ―惑星ハルバード― 常に戦争の引き金となっていたアレス帝国を嫌い、他の国は国際的な連合を組んで牽制していた。 しばらくは軍事力の均衡によって戦争は勃発しなかったが、数百年の長い月日と共にアレスの脅威を忘れ、人類は長い平和な時を謳歌している。 時は宇宙開発競争時代となり、ハルバードでは賄いきれなくなった資源確保のため、星の海に次々と船を飛ばしていた。 先進国が宇宙開発に予算をつぎ込む中、他国より先進的な技術を持ちながらも、国内では宇宙船を建造するための資源の産出量が少なく、競争に遅れをとったアレスは、侵略によって情況を打開するため、密かに地上軍の増強を図った。 そして、アレス帝国は宣戦布告などせず、完全な奇襲攻撃で周辺国を瞬く間に征服する。 その後も、アレスの勢いは止まること無く、軍事費を削り宇宙開発に集中していた主要国のほとんどは抗いきれず1年以内に、最後まで抵抗を続けていたシェバド帝国も3年後に降伏した。 終戦後、各地で反乱軍が蜂起するも強大なアレス軍にはかなわず失敗に終わり、人々は生き地獄という言葉がふさわしい生活を強いられていた。 ハルバードでの国家再建は叶わなかったが、それを願う者達は遥か彼方にある他の惑星に移住するという賭けに出る。 当時、長距離探索を可能にするためワープ航法が開発されていたが、出来立ての技術は不安定で成功が保証されたものではなく、また、生命が存在できる可能性のある星を確認はしていたが、これも確証はなかった。 終戦から12年、敵の居なくなったアレスの監視がゆるんだ隙をみて、かつての先進国で戦前より秘密理に建造していたドックに眠る宇宙船を使って移住計画を実行に移した。 しかし、実用段階に達したアレスの宇宙軍艦に発見されて撃墜される国。 初めての長距離ワープで行方不明になる国。 惑星にはたどり着いたが移住不可能など……。 移住に成功した国家はシェバド帝国の他に、ユニコーン帝国、ベロニカ公国、アウレオス共和国、カイザックス連邦だけであった。
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