第一章

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    -パールグリスデン皇国防衛圏- 第5艦隊は大本営の指示を受けてパールグリスデンに向かった。 ハルバードが戦乱の時代、元々この国はシェバドの属領であったのだが、マックスウェルの分家である皇室貴族が戦功の褒美として新たな爵位と領地を与えられた際に国家を樹立し、その地域では真珠産業が栄えていたことからパールグリスデンと命名した。 アレスには新興国程度としか思われていなかった為か、パールグリスデン貴族達は、大戦後は処刑されること無く、クロノスシティに一般民として落ち延びていた。 ハルバードからシェバド皇族や貴族らと共に脱出し、ブラッククラウンに入植後、星を1つ与えられ、再び独立国家となったのだが、身内でもあり、国家運営をシェバドに頼っている部分もあってか従属国という色が濃く、ロイは越境報告を省いていたので、公式の大使として派遣された艦隊が度々警備隊のお世話になっていた。 本星から詳しい情報を得ていたわけではないが、いつもと違うパールグリスデンの対応にヒューイらは不安を抱いていた。 「おかしいな……、ここまでくれば警備艦隊に警告をうけるはずなんだが……」 「そうですねぇ……、今回はちゃんと越境報告したんですかね」 「いや、陛下の事だからしていないだろう……。レーダ、なにか反応はあるか?」 「我が艦隊以外反応はありません」 普段なら警備艦艇の反応が1つ2つでているのだがまったく写っていなかった。 「通信士、パールグリスデン本星と繋げるか?」 「だめです。向こうからも何か信号を出してるようですがジャミングによるノイズがひどく聞き取れません」 「この状況はヤバいな……」 「司令、とりあえず現状を報告しましょう」 「そうだな。通信、大本営に宛て〝パールグリスデン領域に侵入をしたが警告なし。また、本星は電波障害により通信不可能。何者かによるジャミングと思われる〝と打電。それと全艦に戦闘配置を通達」 巡洋艦を主力とする第5艦隊は、艦隊としての主力と呼ぶには及ばないが、戦艦や空母が無い分、実戦的な訓練時間を存分に取ることができ、それ加えてファンバステン家に伝わるゲリラ的な電撃戦法を駆使し、幾多の紛争で戦功を納めていた。 前線のヒューイと、城の2人の予感は一致していた。
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