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この物語の本当の終焉は、俺がこの現実から居なくならなければ終わらないようである。
そう思い始めたのは、この拘置所に来てからだ。
冷たい部屋には、俺だけである。
【殺人犯】のレッテルの貼られている俺は、その残虐さから独房詰めになったようである。
他の囚人の気配は、足音や何やら動く音以外には、感じなかった。
しかし…俺は、殺してはいない。
俺が、ここに連れてこられた経緯は…。
…約14~15年程前…
ゆっくりとまどろむ視界の向こうにぼんやりと佇む人影。
息苦しく感じる程に狭い部屋には、多分、俺とその人影だけだったと思う。
向かい合う2人の間には、くたびれた机があり、その机の上には、数枚の写真が散らばっていた。
…あれから何時間経っただろう…。
もうすでに夕暮れ特有の強く暖かい西日が、部屋に差し込んできていた。
「…お前が殺した。だから現行犯で逮捕した。わかるか?同じ事を何度も言わせるな。この子を殺した経緯を言えば、今日は済む。この子と会った。そして…殺した。」
俺は、焦点の合わない瞳で、その男を見ようと頑張っていた。
「…家族には知らせているから安心しろ。今日の夕方のテレビや新聞でも公表になってしまっている。後は、お前が綺麗にすべてを吐いて、勤めを一日でも早く終わらせる事だけなんだ…わかるか?」
と言いながら、一枚の写真を俺に投げ出した。
その写真を手にとって見る。
…確かに、覚えはあるが…。
その写真には、上半身が映っている、歳は10代位の女の子が映し出された。
それも…今度は、鮮明に…。
そして、女の子の表情や唇の動き、手の感触、髪の艶や跳ねたまつげ…、思い出されるシーンが頭をよぎった。
スナックで飲んでいる、そして、酔う俺と友人…。
その店の女の子が…この子。…であったはず…。
女の子は、耳元でささやく…。
「…この後は?」
酔いが回っている俺は、大きな声で笑いながら、彼女の肩を抱いていた。
カラオケの音が店中に響き渡り、彼女の声が鮮明に聞こえない…。
「…………なら、いいわよ……。」
と言いながら、俺の胸に抱きついてきた。
俺は、コップの酒を一気に開けると、彼女を見て微笑む。
「…なら、……でよ?……しがだすから!!……イプだし!!」
意味の分らない言葉に、微笑む俺…、そして、店が回転を始めた…。
遠い記憶、遠くなる意識の中で、彼女が微笑んでいた。
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