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「あたしの名前は『宮下 砂梛(みやした さな)』。鶴ヶ丘高校の二年生です」
「で…宮下はなんでトランプ奪われたの?」
「…あたしが廊下を歩いていたら運良く一人と会う事が出来て、ペアかどうかを話してたんです。するとそこにあの人がやって来て―――」
『お前らのトランプを寄越して貰おうか?』
『…!あんた、トランプを奪ってるって言う…!』
『良く知ってんじゃねーか。なら大人しく渡した方がいいぜ?俺は女だからって手加減しねぇからな』
『…っ!逃げよう!早く!!』
そう叫ぶと砂梛の腕を掴み廊下を走り出す。
しかし、砂梛が足をもつらせ転んでしまうと腕を掴んで居た為に二人して転んでしまった。
『あっ!』
『ったぁ~…!大丈夫!?』
『あたしは大丈夫です…!あたしの事は放っておいて、あなただけでも逃げて下さい!』
『ダメ!そう簡単に死んじゃダメだよ!ほら、早く逃げ―――!』
動きが止まる。
不思議に思った砂梛が後ろを振り返ると、そこにはあの男子生徒が立っていた。
『そう簡単に俺から逃げられるわけねぇだろ?オラ!トランプを寄越しな!』
そう言って砂梛のポケットに乱暴に手を入れるとトランプを取り出す。
『あ!』
『ダイヤじゃねぇか。これで後一枚か…』
『ちょっと!そのトランプ返しなさいよ!』
そう叫んで砂梛のトランプへと手を伸ばした時、その体は強く壁へと叩き付けられる。
『っっ!!!』
『言ったろ?俺は女だからって手加減しねぇって。それじゃ、お前のトランプも貰おうか?』
強く壁に体を叩き付けられた事により体の自由が効かない。
男子生徒はトランプを見付けるが目当てのものじゃないのか小さく舌打ちした。
『ちっ…クローバーの2か…』
そう呟くと持っていたトランプを破り捨てる。
すると次の瞬間「ごぽっ」という水の音が聞こえるが、音は砂梛の悲鳴によって掻き消されていった―――。
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