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「ど、どうしたの?」
『トランプを奪ってる奴居たろ?今そいつに追われてて…早く来てくれ』
口調は普段と変わりないが内容が内容だ。
晴夏と直樹は互いに顔を見合せると頷いた。
「宮下!悪いけどちょっと我慢してろよ!」
「え?あ!きゃあっ!」
「それで…!間宮くん今どこに居るの!?」
直樹が砂梛をお姫様抱っこをすると、晴夏は携帯を耳に当てたまま走り出す。
『今は一階の廊下を走り回ってる』
「一階ね!?」
二人が階段を飛び降りると「ダァンッ!」と強い音が響く。
そして、晴夏は即座に持っていた見取り図を照らし合わせた。
「えっと…あたし達が居るのは…!」
焦っているため中々頭が働かない。
早くしないと二人が捕まるかも知れない。そんな思いが益々晴夏の頭を混乱させる。
「今私たちが居るのはここです」
そう言って砂梛が指さした場所は事務室からまっすぐ伸びた廊下にある途中の階段。
晴夏は場所が分かると再び携帯を耳に当てた。
「もしもし間宮くん!?事務室の方に向かって来れる!?」
『事務室?』
「そう!外じゃなくて、廊下を通って来て!」
信は小さく『分かった』というと電話を切った。
「それじゃあ…砂梛は階段の方に隠れてて」
「え?でも二人は…」
「俺らは大丈夫。それに宮下のトランプも取り返さないといけないしな」
そう言われ砂梛は階段を二、三段上りそっと廊下の向こう側を見る。
廊下は薄暗くて少し見えづらいが、いつ桜たちが来るかと緊張の余り手に汗が滲んできた。
やがて、しばらくすると段々大きくなる足音が聞こえてくると、うっすらとだが角を曲がってくる人影が見える。
「東雲!走れ!」
直樹の合図で二人は桜たちへと走り出した。
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