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「くそっ…!あいつしつこいな…!」
先ほどから信を抱えたまま走り続けていた桜は既に体力の限界が近付いてきていた。
「悪い…」
「いや…信のせいじゃねぇよ」
「だがあそこの角を曲がれば事務室だ。きっと直樹たちが居るはず…」
「だと良いんだけどな…」
「ちっ…!テメェら待ちやがれ!」
人一人抱えている桜に追い付けないのが腹立たしいのか男子生徒は叫ぶ。
「誰が待つか…っつーの…!」
そして、桜が角を曲がるとほぼ同時に反対側から走ってくる二人の姿が見えた。
「あいつらっ…!」
「東雲!転ばしてくれ!」
晴夏は体を低くすると床に手を着き足を横へと伸ばす。
突然の事に反応が遅れた桜はそのまま晴夏の足に引っ掛かって転んでしまった。
「!?」
対する男子生徒は目標の人物が急に視界から消えた事に戸惑い、その隙に直樹は顔面目掛け鋭い蹴りを放った。
「がっ!!」
突然の痛みと衝撃に大きく後ろへと飛ぶ。
桜はしばらく床に寝転がっていたが、信が慌てて体を起こすと視界に飛び込んできたのは構えの姿勢を取っている直樹と、その体を起こしている男子生徒の姿だった。
「二人とも大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫だ」
「な…なんとか…!」
床に寝転がったまま、体を大きく上下させる桜。
晴夏と信は桜を壁へともたれかかせると視線を直樹の方へと移した。
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