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突然背後からかけられた声に思わず小さく飛び上がり恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはわたしと同世代くらいのラフな格好をした少年が怪訝そうな面持ちで立っていた。
「お前、北高の生徒だろ? さっきからうろうろしてるみたいだけど、どうした?」
大人びているとは言えない容姿ながらどこか達観した物の見方をしてそうなその少年は、わたしに対して気負いするふうもなく言った。
何故この人はわたしが北高の生徒であると知っているのだろう。
「ああ、いや。俺もそこの生徒だからさ。その格好を見てな」
わたしが不思議そうな顔をしていたのを察してか、彼はわたしが訪ねる前に弁解すると、
「でも休みに制服着てるなんて珍しいな。いや、それはいいんだが、どうしたんだ?」
多分、わたしの様子を見かねて声をかけてきたのだろう。
人と話すのは得意ではなかったがわたしは意を決して、
「・・・・・・その・・・・・・本を、借りようと、思って・・・・・・」
蚊の鳴くような声が途切れ途切れに出てきた。
いつも感じていることだが、口下手な自分が少し嫌になる。
「もしかして、借り方が分からないのか?」
わたしは頷いて、何とか言葉を紡ぐ。
「図書カードの作り方が・・・・・・」
「職員に聞けばいいじゃないか」
彼が首を動かしてカウンターに目をやる。
それは分かっているのだけれど、どうしても声がかけらなかったのだ。
わたしの訴えるような視線を感じたのか彼は少し困ったような顔をしてから納得したように、
「あ?あー・・・・・・そうか。何となく話すの苦手そうだしな」
わたしに背を向けてカウンターまで歩いていき、手に持っていた本をカウンターの上へ置いて職員を呼び止めた。
「すいません、これ返したいんですけどいいですか?それから――」
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