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「ほら、これ」
一仕事終えた後のような表情の彼に手渡されたのは、手続きをするのに使ったわたしの生徒手帳と、わたしが借りようとしていた本。
それから、図書カード。
「しかし休日も制服の上に生徒手帳も持ってるなんて真面目だな。いや、別に嫌味ってわけじゃないんだが」
そう言って苦笑する彼からは、確かに嫌味のようなものは感じられなかった。
それよりもわたしは彼に対する感謝と彼の手を煩わせてしまったことに対する申し訳ない気持ちで頭がいっぱいでそんなことを考える余裕もなかった。
制服を着ていてよかった。
もしも着ていなかったら彼は声をかけてくれなかったかもしれない。
「それじゃ、俺は用事も終わったから帰るけど、お前も気をつけてな。もう遅いし」
そう言うと彼はひらひらと手を振って出口に向かって歩き出した。
「待って」
わたしは慌てて遠ざかる彼の背中に声をかけた。
少し声が裏返ってしまった。
彼が不思議そうな顔で振り向く。
「あの――」
彼がいなかったらこの先わたしはこの図書館で本を借りることができなかったかもしれない。
だから―――
「―――ありがとう」
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